2018年6月10日、新大阪の東洋医療専門学校大教室において第44回子宝カウンセラーの会が開催されました。多くの先生方にご参加いただき誠にありがとうございました。
■プログラム
■第1部 医学博士 邵輝先生 「タンポポT-1エキスは卵巣顆粒膜細胞の成長を促し、卵巣機能低下患者の不妊症治療成功率を上げる」
これまでの動物実験でタンポポT-1エキスが卵巣の受容体を増やし、高齢マウスの卵子を増加させることが明らかにされていますが、なぜタンポポT-1エキスは卵子に効果があるのかについて顆粒膜細胞に着目しました。
卵巣機能低下患者と正常患者の顆粒膜細胞にタンポポT-1エキスを入れて培養したところ、どちらも顆粒膜細胞が増え、さらに濃度に比例して顆粒膜細胞の数が増えることがわかりました。つまり、顆粒膜細胞の数はT-1に依存性があるということです。対照群と比較してタンポポT-1エキスを入れた方はすぐに顆粒膜細胞が減らないこともわかりました。この発表は大変大きな反響と評価を頂きました。
また、タンポポT-1エキスはホルモン合成を調整し、エストロゲンやプロゲステロンの分泌を促進して細胞の成長を助け、顆粒膜細胞にレセプターを増やすことも明らかになりました。今回の講義ではその詳細について学会で発表した資料を基に説明しています。
約480人のデータからタンポポT-1エキスを使用した患者とそうでない患者を比較すると、前者の妊娠率は約30パーセント上がることがわかりました。長く使う、そして3袋以上使うといい結果が出ています。詳しくは日本生殖医学学会での発表を予定しています。
後半は舌診について話しました。日本の特徴として環境的に湿気が多く、甘いものや脂っこいものを多く食べるので湿がたまりやすく痰湿になるといえます。日本では湿を取ることが治療のポイントですので、利水のタンポポT-1エキス、温陽利湿のシベリア産松瘤エキス、健脾の阿膠(あきょう)食品を漢方とうまく組み合わせると一層の効果が期待できます。
■第2部 ウイメンズクリニック本町 院長 藤野祐司先生 「All about ART」
高齢化すると卵巣予備能の低下、染色体異常の増加、子宮内膜症や子宮筋腫の合併頻度の増加などの問題が顕著になります。生殖補助医療とは体外受精、顕微授精のことで、一般にARTと言われます。日本におけるART実施数、出生児数は年々増えており、この十年で凍結胚移植の妊娠が増加しています。卵巣刺激にはいろいろな方法がありますが、OHSSの予防、卵子の質の向上、排卵抑制を目的に変遷を重ねてきたと言えます。
治療希望者の高年齢化や難治性不妊症の増加に伴い着床前診断、卵子提供、代理出産、エピジェネティクス、ゲノム編集といった倫理的問題が表面化しています。
生殖医療は、夫婦と全く人格的に異なる一人の人間が生まれるということ、そしてご夫婦の同意を取ることはできても生まれてくる子どもの同意をとることはできないことが大きなジレンマになっています。このことは治療を行う立場の人間として絶対に忘れてはいけないことだと思っています。
■第3部 漢方薬局柚花香房 薬剤師 井上貴文先生 「私の子宝相談」
タンポポT-1エキスには解毒、ホルモン調節、抗ウイルス等の働きがありますが、今回はタンポポT-1エキスのミトコンドリア活性化作用がより多くのエネルギーで妊娠を助けたと考えられる症例を参照してお話ししました。
また、帝王切開で出産後、子宮に液体が溜まり内膜が厚くならなくなった症例において、炎症で内膜が育たず、炎症を抑えるために水が集まっていると推察し、抗炎症のシベリア産松瘤エキス他を用いて妊娠・出産された症例を説明しました。
最大の集客は誠実であり続けることです。売ろうとしない、儲けようとしない、あくまでも患者さんの幸せを一番に考えて頂きたいと思います。
■第4部 神戸東洋医療学院 早川敏弘先生 「食情報の最前線」
世界保健機関(WHO)は摂取による心血管疾患で毎年50万人以上が死亡していることからトランス脂肪酸を2023年までに世界の食品から一掃することを目指す戦略を発表しました。また、肥満が国家の危機を招くとして多くの国で砂糖税が導入されています。抗生物質の乱用に対して消費者が声を上げたことから、米国では大手レストランチェーンが抗生物質を日常的に使用して育てられた食肉の段階的廃止を発表しています。農薬の曝露により子どもにさまざまな悪影響が現れたり精子の質が低下していることを指摘する研究が相次いでいます。こういった食の安全という観点から押さえておきたいポイントを紹介しました。
■第5部 萬育堂薬房 橋本実沙樹先生 「温灸・カッサ講座 腰痛」
腰痛に対する温灸とカッサの使用についてお話ししました。ツボは大腸兪、委中、後溪を使います。温灸を固定しにくい場所なので、ベッドやベルト、ハサミを工夫して使ってください。
2018年10月12日から「カッサ療法士育成講座 第19期」が開講します。場所は大阪市北区にある萬育堂薬房で、東洋医学、カッサの使い方、ツボ等について学びます。2クール受講後はカッサ療法士認定書を発行します。ぜひご参加ください。
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次回、第45回子宝カウンセラーの会は第3回統合医療生殖学会として以下の開催予定となっています。今回は子宝カウンセラーの会の会員でなくても参加が可能です。ご参加のお申し込み、お問い合わせは一般社団法人子宝カウンセラーの会までお気軽にお問い合わせください。皆様のご参加をお待ちしています。
■第3回統合医療生殖学会(第45回子宝カウンセラーの会)のお知らせ
日時: 2018年9月9日
10時~15時30分(開場9時30分~)
場所: 東洋医療専門学校 7F大教室(新大阪)
プログラム(予定):
第1部 医学博士 邵輝先生
第2部 みうらクリニック 院長 三浦直樹先生
第3部 漢方の野崎薬局 薬剤師 野崎康弘先生
第4部 症例パネルディスカッション
第5部 温灸・カッサ講座 橋本実沙樹先生
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第45回子宝カウンセラーの会ご案内